赤毛のアンの本はどこの出版社の誰の訳がいいんでしょうか?
映画とアニメから好きになったため、これから本を読もうと思っています。
教えてください。
定番は、新潮文庫の村岡花子訳です。発売以来50年近く、ずっと人気を保ってきました。
アニメのファンなら、旺文社文庫の神山妙子訳です。アニメはこの本を元にしているため、
セリフがおんなじです。現在絶版ですが、学校や地域の大きい図書館にあるでしょう。
原書房の山本史郎訳。珍しく男性の訳者で、訳がかっとんでて面白い。村岡訳に親しんだ
人には抵抗があるかも。解説が非常に細かくてよろしい。
角川文庫の中村佐喜子訳。村岡訳についで古い。
講談社の完訳クラシック、掛川恭子訳。装丁がきれいで良いと思う。
偕成社文庫の茅野美ど里訳。訳が丁寧で良い。
金の星社、きったかゆみえ訳。映画のスチールを使っているので、ミーガン・フォローズ
のファンの人にはいいかも。
集英社の松本侑子訳。文庫もあり。注釈が詳しいのが良いが本文は嫌いだ。
他にも色々出ていますが(現在20種類くらい)、あまりお勧めできるものはありません。
完訳と表記してあるものもありますが、あまりこだわらなくても良いと思います。
本当の意味で、完全な訳、と言う本は、まだ出ておりません。
まずは上に挙げたもののうちから、何冊も読んでみて、自分の感性にあったものを生涯の
友とされたら良いと思います。
本はたくさん読みましょう。
ましうさん、丁寧な解説ありがとうございました。
さっそく、気になったものを、読んでみます。
< 本当の意味で、完全な訳、と言う本は、まだ出ておりません。
ましうさん、質問です。これはどういう意味ですか?ぜひおしえてください!!
本当の完訳ってどういうものなのですか?知りたい〜!!
Kuraraさんこんにちは。質問に気づくのが遅れてごめんなさい。
「赤毛のアン」は長いこと村岡花子訳がデファクトスタンダードになっていましたが、
完訳ではありません。後半、特に物語の肝心要の部分がすっぽりと抜け落ちています。
そういうわけで、ここ何年かで「完訳」を看板にした本が何冊も出てきました。
翻訳ものは本来、すべて「完訳」であることが望ましいのです。しかし、読者の対象
年齢を考えてのことや、訳者の力量、そして(ほとんどの場合)出版社の台所事情で、
大筋に関係のない部分や、細かい部分は省かれてしまいます。それで、物語の部分は
すべて訳してありますよ、と言うのを「完訳」と言っているようです。
だから、「完訳」とうたっていても、実際は一字一句、全部日本語にしているのでは
ないわけ。そういう意味で、「完全な訳、と言う本は、まだ出ておりません。」と書
いたのです。その一例を、二つ下のスレッドに書いてあります。
でも、ファンとしては、そこに何が書かれているか、一言漏らさず知りたいですよね。
特にモンゴメリという作家は、言葉遊びというか、あや取りのように言葉を幾重にも
絡ませて使う癖があるので、訳者に相当な知識と力量がないと、言葉の裏に隠された
作者の意図、というのが見えてきません。その上、どうも英語でない言語まで盛り込
まれているようなので、こうなると日本人にはお手上げです。
ではどうしたら良いか。まず原書で読んでみる。でもこれはその人の英語力でわかる
範囲が、その人なりの「完訳」ということになります。次に、手当たり次第に「赤毛
のアン」の本を読み比べて、違う表現のところを原書にあたる。これが一番現実的で
しょう。これをやるとほとんどの訳が、大なり小なり村岡訳を意識しているのが良く
わかります。村岡訳を書き直しただけ、なんてのもけっこうあって、笑えます。
そうやって、自分なりの「完全な訳」に少しずつ近づけていくんですよ。
ただここで誤解して欲しくないのは、村岡訳や他の本も、完訳でないからだめだ、と
いうことではないんですよ。村岡花子の文体は、現在では少々古くさくはあるけれど、
日本語として正しく、かつ美しい、と言うことでは、他に類のないものだと思います。
私などは翻訳家でもないし、作家でもないし、ましてや文学者でもありませんので、
学術的な意味合いはまったくありません。ああまた言ってるなと聞き流していただい
て良いと思います。
まあしかし、いつかこんな話題で皆さんとお話できたらな、と思います。
ましうさん、ありがとうございました。
私もましうさんみたいにもっともっと赤毛のアンのこと知りたいな。
奥が深いですねー。